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最高裁判所第二小法廷 昭和25年(あ)1161号 決定 1952年6月07日

本籍並びに住居

石川県石川郡林村字曾谷八の三〇番地

薪炭小売商

加藤君男

大正一三年一月二〇日生

右の者に対する賍物運搬、同寄蔵被告事件について、昭和二五年四月一二日名古屋高等裁判所金沢支部の言渡した判決に対し、被告人から上告の申立があつたので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人岩村辰次郎の上告趣意について。

論旨引用の判例は、被告人が甲に対し乙への一定事項についての伝言を頼んだという事実を示す証拠とそのような伝言を頼んだのではないという事実を示す証拠とによつて、被告人が甲に対し暗に乙への右事項についての伝言方を慫慂したとの事実を積極的に認定した判決を、その証拠上の理由に齟齬があるとしたものである。そして、刑訴三三五条一項は、有罪の判決における証拠説明としては、証拠の標目を示せば足りる旨を規定しているから、第一審判決が各種の証拠を羅列しているからといつて、被告人に犯意があつたことを示す証拠とこれがなかつたことを示す証拠を綜合して被告人に犯意があつた旨を認定したものと做すべきではなく、本件のような証拠については、判示にそわない部分はこれを採用していない趣旨だと解すべきものである(昭和二六年(あ)二〇〇一号同年一二月二五日第三小法廷判決、判例集五巻一三号二六三〇頁参照)。従つて、所論引用の前記判例は、本件に適切でなく、論旨は採用することが出来ない。

被告人の上告趣意について。

論旨は、事実誤認の主張を出でないものであつて、刑訴四〇五条に当らない。

なお、記録を調べても、本件につき、同四一一条を適用すべき事由は認められない。

よつて、同四一四条三八六条一項三号一八一条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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